本技術は、「カメラで角度を知る」新しい手法の提案と、その応用です。
本手法では、「単眼のカメラ」と「見る角度に応じて変位する可変モアレパターン(VMP)」を用います。VMPは、レンチキュラーレンズやマイクロレンズアレイの裏に微細な繰り返し模様を印刷したものであり、見る角度に応じて変位するパターンを表示します。このVMPのパターン変位を画像処理で検知することで、カメラとVMPの相対的な角度を計測する手法を開発しました。さらに、これをARマーカに応用し、従来方式とは全く異なるVMP方式で姿勢計算を行うことで、従来マーカの最大の問題であった「正面から観測したときの姿勢推定精度の悪さ」を克服し、正面からでも非常に高精度で安定した姿勢推定を行う技術を開発しました。これは、AR分野ではグラグラしない安定した仮想物体の表示を可能にし、ARコンテンツの品質向上に大きく貢献します。その他、ロボット制御、計測等の幅広い分野において測位や位置合わせに使えるほか、VMPの原理を応用した新たな計測機器の開発も期待できます。さらに、マーカ自体は小型・安価・電力不要なので、測位やARのインフラとしての大量・広範な利用も考えられます。

審査委員講評

マイクロレンズアレイを現代の視覚的なイリュージョンの代表といえるARのためのマーカーに応用した点が評価できる。正確な視角の変化が分かることでARの利用範囲の広がりも大いに期待できる。