近年のカメラには、ごく当たり前のように自動でフォーカスを合わせる機能、いわゆるオートフォーカスがついています。これに倣い、カメラの視線方向を物体に自動で向けることを、オートパン・チルトと呼ぶことにします。もしこのオートパン・チルトを、ほとんど時間遅れなく高い制御レートで、つまり超高速に実現させれば、仮に撮影したい物体が激しく動き回っていたとしても、それをあたかも止まっているかのように撮影することができるでしょう。これは映像そのものの定性的な面白さや迫力はもちろんのこと、撮影時の露光時間を特に短くすることなく、ほとんどモーションブラーのない映像の記録が期待されるのです。ところが、従来の「雲台」と呼ばれる回転ステージを用いたオートパン・チルトでは、それ自体及びカメラとを合わせた慣性モーメントの影響で、肝心の超高速性を実現することができませんでした。本技術1msオートパン・チルトでは、雲台の代わりにサッカードミラーと呼ばれる独自の光学デバイスを用いて、超高速なオートパン・チルトを実現しました。なお1msとは、サッカードミラーの制御周期及びカメラの撮像周期の1/1000秒に由来します。

審査委員講評

ピンポン球のような急激に加減速を繰り返す物体を、当該研究室で有している高速ビジュアルフィードバック技術で追跡し、ピンポン球に映像を投影することに成功している。本研究はスポーツなどをデジタルメディアとして拡張する潜在力を有した技術として高く評価できる。

1msオートパン・チルト:(左)システム概略図 (右)卓球のラリーをとらえた映像