ゴキブリを制御しユビキタスなインターフェースへ「Calmbots」
筑波大学 デジタルネイチャー推進戦略研究基盤
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採択技術名 |
ゴキブリを制御しユビキタスなインターフェースへ「Calmbots」 |
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採択者名 |
筑波大学 デジタルネイチャー推進戦略研究基盤 |
採択年 |
2020年 |
特別賞 |
DCAJ会長賞を受賞 |
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
概要
「Calmbots」は昆虫の持つ移動能力、自己維持能力、隠れる能力を利用した新しいインターフェースである。複数のマダガスカルゴキブリを電気刺激で制御することで、ディスプレイ(ピクセル化)や物体の移動に利用したり、ペンを装着して線を引かせたりすることができます。
詳細
本技術「Calmbots」は、生物の持つモビリティ性、自己メンテナンス性、潜伏能力などの特性を生かした新しいインターフェースです。複数のゴキブリを電気刺激で制御することで、彼らをピクセルに見立てディスプレイとして用いたり、物体を運搬したり、ペンを持たせ線を書くことができます。さらには、触覚インターフェース、入力インターフェース、オーディオデバイスとしての可能性を秘めています。
ゴキブリは我々の生活空間に入り込み、我々からは見えないところで生活しています。しかし、彼らが存在することを我々はしばしば認識します。これは、我々が「ユビキタスコンピューティング」と呼ぶ概念の性質と似ています。「意識的ではないが、確かに存在し、ときに現れる機能」とも言えるからです。彼らをコントロール下に置くことで、彼らはグリム童話の「小人の靴屋」のように、我々の目に触れずにゴミを片付けたり、物の位置を直してくれたりします。仕事が終わると彼らは勝手に見えないところに隠れ彼らの生活に戻ります。彼らをユビキタスコンピューティング上のロボティクスと考えることは、ユビキタスなテクノロジーを考える上で十分な示唆を与えてくれるでしょう。
我々の技術には三つの新規性があります。一つ目は、ゴキブリを制御することで、一般的なロボットが持ち得ない、壁やカーペット、ケーブルのある床での移動などの高いモビリティ性を獲得したことです。二つ目は、オプションパーツを付与することによって、線を描写したり、物体を運搬したりすることを可能にしたことです。三つ目は、複数匹のゴキブリを同時制御するために、実際に群れをなす生物であるアリに見られる「働きアリの法則」を模倣したアルゴリズムを開発したことです。制御不能な個体が現れた時に補欠の個体がタスクを引き継ぐことでタスクの達成率を高めています。
審査講評
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独創性と取り組んでいることは応募作品の中では一番ぶっ飛んだ研究とテクノロジーである。市場創出というと全く想像がつかないが、ただちょっとした動画を見るだけで記憶に残るほどのインパクトという意味ではコンテンツ性が強いのでなんらかの今後の未来につながるプロジェクトにはなるだろうと思われる。
(柳澤 大輔 委員/株式会社カヤック 代表取締役 CEO)
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ライフサイエンス、群行動アルゴリズム制御等の先端技術を駆使して昆虫行動のコンテンツ化を実現したユニークな成果である。生活空間のあらゆる場面での昆虫による新たな表現や機能を実現する途を拓き、大きな波及効果が期待される。今後、アートやエンジニアリングで活用されることを期待したい。
(河口 洋一郎 会長/一般財団法人デジタルコンテンツ協会 会長、アーティスト、東京大学 名誉教授)